競合他社の動向に注目することは、市場の変化を予測し、新しいトレンドや成功例を見出し、ニッチ市場に関する最新知識を取り入れるために効果的な方法です。
だからと言って、競合相手のSNSをさっとチェックしたり、彼らのメルマガに登録したりするだけでは十分とは言えません。競合他社を継続的かつ能率的に観察し、市場環境が変化するに連れて自分の見解を変えていくためには、しっかりとした戦略が必要となります。
そんな時に効果を発揮するのが競合分析です。競合分析を通して、市場の全体図に加えて、主な競合相手についての詳細をきちんと理解することができるようになります。
ここでは、ECビジネスに特化した、自分でできる競合分析の手段を説明していきたいと思います。
現在の市況を再評価したいという経験豊富なショップオーナーの方も、独自商品で市場へ初参入する準備をしている人も、こちらで紹介している競合分析のステップとツールを活用し、自ら行う競合分析にぜひ役立ててください。
競合分析とは何か?
競合分析とは、自分のビジネスが複数の競合他社と比べて、どのような位置にいるかを判断するための分析です。競合他社の強みと弱みを評価することにより、自分の会社をいかに優位な立場に置けば良いかがわかります。
競合分析は、ターゲット市場における商品やサービスの潜在的優位性や支障を見極めることに役立ちます。また、直接および間接的な競合相手が、どのようなマーケティング、価格設定、流通などの戦略を取り入れているかをチェックすることにも効果的です。
競合分析では何をカバーするべきか?
競合分析の内容は、競合相手から何を学ぼうとしているかにより大きく異なります。例えば、競合他社のある特定な側面(ウェブサイトなど)を分析をする場合もありますし、全体的なマーケティング手法などのよりハイレベルな内容を調査することもあります。
競合分析を構成する方法はたくさんあるので、まずはこのような調査で頻繁に使用されている情報を種類別に見ていきましょう。
ハイレベルな競合分析をする場合には、他社の市場ポジショニングに関する以下のような情報を必ず集めるようにしてください。
- ターゲット顧客は誰か
- 現在の市場シェア占有率
- 競合他社のビジネスや商品が有する差別化要因やユニークな付加価値
- 販促資料の中で際立つ、主な利点や特色
- 異なるマーケットプレイスでの商品の価格帯
- 配送手段
- 財源やベンチャーキャピタルからの資金調達の有無
これらの情報は、競合他社それぞれの特徴を識別することに加え、ニッチ市場においてどのように他社から差別化を図っているのか、という広範囲な調査を実現してくれます。
競合相手についてより具体的な側面をチェックしたい場合には、以下の内容を分析に取り入れることをお勧めします。
- 競合他社のウェブサイト機能(例:検索ツール、商品画像、デザイン、レイアウト等)
- 顧客体験(例:カード落ち戦略、カスタマーサポート、モバイル UX等)
- SNS戦略 (例:使用中のSNSチャンネル、投稿頻度、エンゲージメント等)
- コンテンツマーケティング戦略(例:ブログのトピック、コンテンツの種類等)
- マーケティング戦略(例:プロモーションの種類、割引の実施頻度等)
- Eメールマーケティング戦略(例:ニュースレター、プロモーションコード等)
- 顧客レビュー(例:商品についての口コミ、繰り返される苦情等)
Eコマースではなぜ競合分析が重要なのか?
この時点で、「ビジネスオーナーの自分にとって、なぜ競合分析をする必要があるのか?」と思っている人もいるかもしれません。
主な理由としては、直接の競合相手を知らずして効果的な競争はできないということです。つまり、「自分を差別化するものは何か」ということを知らずに、差別化を図ることはできないからです。
また競合調査は、Eコマースビジネスにとって以下のような効果を発揮します。
- マーケティング戦略について、よりしっかりした情報に基づいた意思決定ができる
- 業界のトレンドを特定できる
- 自分自身にとっての基準を設定することができる
- 価格戦略の見極めができる
- 顧客への新しいアプローチ方法、さらにはアプローチしていく新しい顧客を発掘することができる
-
市場に存在する隙間を見つけることに加え、その隙間に「市場性」があるかどうかを確かめることができる
このような種類の分析は、ビジネスオーナーになりたての人だけに該当するものではありません。競合分析は会社が成長するに連れて継続的に進化し、時間を経て発展していく生きた資料です。
そのような資料があれば、競合相手と比べて自分のブランドが現在どのような位置にいるかを的確に判断することができます。さらに将来自分がどのように競争に勝ち抜いていくかについて、明確な方向性も示してくれるのです。
競合分析の調査方法
競合分析を始める準備ができたところで、適切に構成されたまとまりのある調査ができるように、以下で説明する手順を参考にすることをお勧めします。
手順1:競合相手7〜10社の一覧を作る
分析に含めるべき競合他社を特定するには、彼らの取扱商品やビジネスのアイデアを、Google、Amazon、Alexaなどで検索してみてください。分析に必要な競合相手とは、以下のようなブランドのことを示しています。
- 類似商品を販売している
- 同じようなビジネス基盤がある
- 類似オーディエンスおよび少々異なるオーディエンスに販売をしている
- マーケットプレイスの新規参入者および経験者
このように多様な競合相手をまとめ、適度な大きさの市場勢力図を作るには、詳細な分析に移る前にまず上記に該当する競合相手7〜10社を書き出す必要があります。
手順2:スプレッドシートを作る
選択した競合相手のデータ収集をするに連れて、集めたデータは表やスプレッドシートにまとめ、いずれ共有および更新できるようにしておきましょう。まとめた資料の中には、以下のように比較したい基準を書き出すようにしてください。
- 価格帯
- 商品構成
- SNSのエンゲージメント
- リードジェネレーションに使用されるコンテンツ
- 初ビジターへ提供される特典
- その他、掘り下げる価値のある目立った特徴など
手順3:第一競合と第二競合を区別する
競合相手をスプレッドシートに書き出していく際、それぞれを第一、第二、第三競合へと分類してください。そうすることで、自分のビジネスとの関連性をより良く把握することが可能になります。
- 第一競合は、あなたのターゲットオーディエンスに対して類似商品/サービスを販売している直接的な競合相手のことを示します。顧客も、これらのブランドをあなたのブランドとの比較対象として見ています。例:ナイキ社とアディダス社は第一競合同士。
- 第二競合は、異なるオーディエンスに類似商品/サービスを販売している競合他社のことを示します(例えば、一社は商品を高級市場向けに、もう一社は大衆市場向けに販売)。例:Victoria’s Secret社とWal-Mart社は第二競合同士。
- 第三競合は、同じオーディエンスに向けて販売活動をしているものの、自分とは同じ商品を取り扱っていないブランドのことを示します。第三競合はビジネスの展開次第で、潜在的なビジネスパートナーにも、将来的な競合相手にもなり得ます。例: ゲータレード社(スポーツ飲料)とUnder Armour社(スポーツウェア・シューズ)は第三競合同士。
手順4:ツールを通してデータ収集をする
分析する競合相手が決まったら、競合分析で使う調査用データの収集を始めましょう。現在は競合調査用データ収集をよりシンプルで効率的に、そして正確に行うためのツールがたくさんあるので積極的に活用してください。
ビジネスの成長段階や予算によっては、AhrefsやSEMrushなどのよりパワフルなツールを導入することも可能です。しかしここでは、競合相手の調査に効果的なことに加え、より手頃に行える選択肢を紹介していきたいと思います。
SimilarWebは、ウェブサイトの予想月間アクセス数や、主要なアクセス源に関するデータを提供するツールです。このような情報は、競合他社が注力しているマーケティング活動を推測する際に役立ちます。さらには自分と同じようなウェブサイトを見つけることもあるかもしれません。その場合には、新しい競合相手として何かを学ぶことができるでしょう。
Mailchartsは、Eメールを使ったマーケティング関連データを提供してくれるツールです。その内容は、競合相手による販促用メールの送信頻度から、表題用の宣伝文句に至るまで多岐にわたります。
Buzzsumoというツールに競合相手のドメイン名を入力すると、最もアクセスの多いコンテンツに加え、SNSでコンテンツがシェアされた合計回数や、シェアされた場所などをチェックすることができます。またこのツールを使って、自分と同じようなコンテンツを制作しているウェブサイトを特定することも可能です。
Alexaは、それぞれのウェブサイトのオーディエンス特性や、検索ランキングを識別することに役立ちます。また、競合相手のことを言及しリンクを貼っているウェブサイトを見つけることもできるため、競合他社の宣伝活動やSEO戦略を把握することが可能になります。
Facebook オーディエンスインサイト(Facebookのビジネスマネージャからアクセス可能)は、現在最も大規模なSNSの一つであるFacebookから、多岐にわたる情報を提供してくれるツールです。多くの競合相手が運営するFacebookページのフォロワーについて、彼らの年齢層、性別、居住地などの詳細情報を見ることができます。
上記のようなツールを使ってデータ収集をし、競合分析に用いるスプレッドシートにデータを落とし込めば、調査結果が一つのまとまった場所にきちんと保存されるのでとても便利です。
ステップ5:手間をかけた調査もする
ソフトウェアやツールを使った調査と並行して、少々手間のかかる調査を実施することもお勧めします。例えば、潜在顧客の一人となって、競合相手のマーケティング活動をチェックしてみるのも一つの案です。
この調査は、以下のように実践することができます。
- 競合相手のブログを登録購読する
- 競合相手のSNSをフォローする
- 競合相手のネットショップでカート落ちしてみる
- 競合相手のネットショップで商品を実際に購入し、顧客体験そのものを評価してみる
上記のような調査を実施する場合には、気がついたことをメモに取り、調査結果を必ず書面化してください。競合相手のカート落ちへの対応や、SNSやその他の場所でのカスタマーサポート態勢を調べることにより、顧客を惹きつけて売り上げを伸ばすために、彼らが実践しているユニークな手法を発見することができるでしょう。
補完データ
業界特有のトレンドや経済指標などの市場情報を集めることによって、競合分析から得たインサイトをさらに拡充させることができます。
例えば、自分の会社や競合相手の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)をまとめたSWOT分析を実施し、集めたデータセットに付け足してみることも検討してみてください。これらの側面を明確にすることは、自分のビジネスを客観視することに役立つだけでなく、ブランドの将来を見据えた、より賢明で情報に基づく意思決定が実現できるようになります。
避けるべき、よくある失敗
競合調査の作成方法がわかったところで、ここからは苦労して集めてきたインサイトが無駄にならないように、気をつけるべき落とし穴を見ていきたいと思います。
1. 競合分析は一度きりのものではない
過去に行った競合分析の見解の見直し(またはアップデート)を怠ると、不完全なデータやお粗末な意思決定を招いてしまう恐れがあります。ビジネスは常に進化しています。そのため、競合相手には継続的に注意を払うべきであり、一度だけ分析をすればいいという訳ではないことを覚えておきましょう。
2. 先入観を無視してしまう
私たちは人間であるがゆえに、最初に仮定した結論へと急いでたどり着こうとする傾向があるようです。このような行動は「確証バイアス」と呼ばれています。競合分析を進める中では想定したことを意識しながらも、競合相手についての自分の仮説に固執することなく、しっかりとデータを検証して答えを導くことが大切です。推測に頼らずに、データからきちんと意思決定を導き出すようにしてください。
3. 行動に移さず無意味なデータにしてしまう
せっかく時間を割いて行った競合分析をそのまま放っておくのではなく、調査結果に基づいた行動をしっかりと取るようにしましょう。調査結果を考慮した戦略計画を作成し、競合分析の中で気が付いたマーケティング手法をユニークな角度から実践してみてください。
4. 必要以上の作業をしてしまう
競合分析用のデータ収集を単純化するツールのおかげで、正確性の高い優れた比較分析をすることが、今までになく容易になりました。あえてやり方を変えてプロセスを難しくするのではなく、これらのツールを積極的に取り入れて、データを手早く処理するようにしましょう。そうすることで重要なインサイトを無駄なく導き出すことができ、それに基づいた意思決定をすることが可能になるのです。
5. 目標なく分析を開始してしまう
明確な最終目標がなく競合分析を始めると、その作業は困難を要してしまいます。調査に没頭する前にしっかりと目標設定をし、競合相手から何を学びたいかを考えておきましょう。
6. 市場のタイミングを把握していない
競合相手のデータをチェックする時は、ある一定時期に固執するのではなく、時間の経過とともに彼らがどのように成長してきたか、ということに注力してください。競合他社の戦略がどのように進化してきたかという情報は、ビジネスの初期段階(あるいは現時点)のみの情報よりも大いに参考になるはずです。
競合分析:ビジネスにとっての利点
競合分析を実施し市場への理解を深めていくことにより、競合相手の上を行くだけでなく、彼らから実に多くのことを学ぶことができるでしょう。
原文:Kaleigh Moore 翻訳:クリンカース恵子
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