さまざまな特典や割引を顧客に提供するロイヤリティプログラムは、自社ショップに導入することで売り上げを高められるほか、さまざまなメリットがあります。この記事を読むことで、ロイヤリティプログラムの概要や活用するメリット、導入方法を理解できます。効果的な活用事例も紹介しますので、参考にしてください。
ロイヤリティプログラムとは
ロイヤリティプログラムは、企業が顧客に対して長期的な関係を築き、リピート購入を促進するために、特別割引などを提供する取り組みのことです。
ロイヤリティプログラムでは、顧客が定期的に自社の製品やサービスを利用する動機を得られるよう、さまざまな手法を使います。たとえば購入ごとにポイントを付与し、そのポイントを割引や特典と交換できるようにする方法があります。ほかにも特定の商品を優先的に購入できる先行販売や、特別な割引を提供する方法などが存在します。年会費を支払う顧客に対して送料を無料にするなどの特典を提供する手法も挙げられます。
ロイヤリティプログラムの種類4つ
ポイント型
商品を購入したりサービスを利用したりするたびにポイントが付与され、顧客はそのポイントを特典やキャッシュバック、無料商品などと交換できるのがポイント型です。ポイント型は多くの企業で採用されており、顧客にリピート購入を促す効果があります。
ポイントの獲得条件は企業によってさまざまです。商品の購入以外にも、SNSでのシェア、ECサイトへのレビュー投稿、誕生日など特定のイベントでポイントを付与する取り組みも見られます。なかにはゲーム要素を取り入れることで、顧客の興味を引きつけ、ポイント獲得の楽しさを高める工夫を行う企業もあります。毎日ログインしてルーレットを回し、当たりが出ると多くのポイントをもらえるなど、顧客が日常的に参加したくなる仕組みが採用されることが多いです。
会員ランク型
会員ランク型は購入金額や来店頻度、注文回数などに応じてランクを設定し、各ランクに応じた特典を顧客に提供する仕組みです。会員ランク型ではランクが上がるほど、さらに優れた特典やサービスが受けられるようになります。
事業者とのつながりの深さ、つまりメルマガや公式LINEの登録、SNSアカウントのフォロー、YouTubeチャンネルの登録などが、会員ランクを上げる条件として設定されることもあります。これは、マルチチャネルで販売を行う企業にとっては、特に有効な手法といえるでしょう。このようにしてつながりをつくることで、顧客にさまざまな媒体を通じて情報を届けられるようになります。
有料型
有料型は、顧客が参加費を支払うことで特典やサービスを受けられる仕組みです。主な支払い方法には、定期的な支払いが必要なサブスクリプション形式と、一度の支払いで完了する買い切り形式があります。有料型のロイヤリティプログラムに参加する顧客は、無料サービスを利用するユーザーに比べてブランドに対する期待が高いため、多くの消費を見込めます。
社会貢献型
商品を購入するだけで慈善団体への寄付や環境保護への寄与などの社会貢献ができるという仕組みになっているのが社会貢献型です。社会貢献型を導入する事業者の多くは、企業理念と社会活動をうまく結び付け、顧客からの支持を得やすくしています。こうした取り組みは、企業の信頼性を高めるブランディングにつながります。
社会貢献型では、商品などを報酬として顧客に提供するわけではありません。しかし、社会への貢献がほかのプログラムにおけるポイントや特典に相当するため、顧客によっては大きな満足感を得られます。特に、社会のために何かをしたいと考えているものの、具体的な行動を起こせない人々にとって、自分の購入が貢献につながることは大きな魅力となるでしょう。
ロイヤリティプログラムの成功事例
株式会社ソシア
医薬品やコスメを販売する株式会社ソシアは、独自のポイント制度「ソシアポイントサービス」を通じて顧客のロイヤリティを高めることに成功しています。顧客はソシアの商品を購入することでポイントを獲得できます。さらに、定期購入や体験談提供などの条件をクリアしたり、あるいはキャンペーン実施期間中に商品を購入したりすると顧客は追加でポイントをもらえます。ポイントは、商品購入時に使用したり、景品などと交換したりできます。
このように、継続購入したくなるような動機付けを行うことで、ソシアはリピーターを獲得しています。交換できる景品には食品や便利雑貨、家電製品などが含まれており、顧客が自分のニーズに合わせてポイントを活用できるようにしている点にも工夫が見られます。
SHOPLIST(ショップリスト)
アパレルショップのSHOPLISTは、顧客の購入金額に基づいて会員ランクを設定し、ランクに応じたポイント還元率を提供することで、リピーターを獲得しています。ランクは、レギュラー会員、シルバー会員、ゴールド会員、プラチナ会員の4種類です。購入金額に対し、シルバー会員は2%、ゴールド会員は3%、プラチナ会員は5%のポイントを受け取ることができます。高ランクの会員になればより多くのポイント還元を得られるようになるため、顧客の購買意欲を刺激できます。
各ランクの達成条件は、6か月間の購入金額に基づいており、シルバー会員になるには10,000円以上、ゴールド会員は30,000円以上、プラチナ会員は50,000円以上の購入が必要です。6か月間の期間制限を設けるなど、一定期間内の購入額を増やそうとする工夫も見られます。
Kuradashi(クラダシ)
食品を中心に日用品や美容品などを販売するKuradashiは、社会貢献型のロイヤリティプログラムを採用して成功している企業です。売り上げの一部を社会活動に寄付する仕組みを導入することで、顧客が商品の購入を通じて社会貢献ができるようにしています。
購入時に支援したい社会貢献団体を顧客自身が選べる点も特徴で、環境保護や海外支援、動物保護、災害支援など、幅広い分野での社会活動をサポートすることができます。社会貢献度が数値で示されるため、貢献している実感を得られやすいのもポイントです。また、社会貢献が気軽にできる点も評価されています。
このように、Kuradashiは顧客に対して通常の買い物以上の価値を提供し、社会全体への利益をもたらすことで、顧客の支持と忠誠心を高めています。
ロイヤリティプログラムのメリット
口コミ経由で新規顧客を獲得しやすくなる
ロイヤリティプログラムを導入することで利用者の満足度が向上して口コミが広がりやすくなるため、新規顧客を獲得しやすくなります。提供される特典やサービスに価値を見出した人は、一般的にその良さを他人に伝えたくなるものです。
伝えるための手段として代表的なのが、SNSや口コミへの投稿です。いずれも実際の商品を使用したユーザーの生の声が知れるため、企業からの広告やプロモーションよりも信頼されやすい傾向にあります。
こうして関心を持ったユーザーが商品を購入したりサービスの利用を開始したりすることで、新規顧客を増やすことができます。
集客コストを抑えられる
ロイヤリティプログラムの導入によって既存顧客の離脱を防げるため、集客コストを抑えることができます。一般的に、新規顧客を獲得するには既存顧客を維持するより約5倍のコストがかかるとされています。新規顧客を引きつけるためには、さまざまな媒体で広告を出稿したり、信頼の獲得や不安の軽減などに向けた取り組みをしたりする必要があるためです。
その点、既存顧客は製品・サービスの詳細をある程度理解しており、新規顧客よりブランドを信頼していると考えられます。そのため、新規顧客ほど集客にコストをかける必要がありません。ロイヤリティプログラムを導入することで、顧客のリピート購入が増え、結果的に集客コストを抑えられます。
顧客維持率を高められる
ロイヤリティプログラムを導入することで、顧客が長期にわたりブランドを利用する可能性が高まるため、顧客維持率の向上を期待できます。顧客維持率とは、特定の期間内に商品の購入を継続している顧客の割合を表す値のことです。顧客維持率が高ければ高いほど、商品に対する満足度が高く、リピーターが多いと考えられます。
顧客維持率を高めてリピーターを増やすことで、より安定した収益を見込めるようになります。
売り上げの増加を見込める
ロイヤリティプログラムを通じて顧客のブランドに対する愛着心(ロイヤリティ)を高めることで、売り上げの増加につながります。
アメリカ在住の18~65歳の1,500人を対象としたstatista(スタティスタ)の調査(英語)では、約8割の人が無料・有料問わずロイヤリティプログラムがきっかけで、同じブランドから商品をリピート購入するようになったと回答しています。また、ロイヤリティが高い顧客は、低い顧客と比べ、年平均の利用回数や購入金額が高いことがEmoteionTechの調査によりわかっています。
つまり、ロイヤリティプログラムそのものがリピート購入に効果的であるため、導入することで売り上げの増加を見込めるようになります。また、ロイヤリティプログラムを通じて顧客のロイヤリティを高めることができれば、その顧客の購入回数や購入金額を増やすことができ、全体の売り上げも向上します。
ロイヤリティプログラムのECストアへの導入方法
自社ECストアにロイヤリティプログラムを導入するには、既存のソフトウェアやアプリを活用する方法が一般的です。たとえばShopifyでは、Shopifyアプリストアからアプリをダウンロードするだけで、ネットショップにロイヤリティプログラムを導入できます。
Shopifyに限らず、さまざまなECプラットフォームでこうしたソフトウェアやアプリが提供されているため、提供したいサービスや特典に最適なものを選べば、事業に適したロイヤリティプログラムを構築することが可能です。
まとめ
ロイヤリティプログラムは顧客の継続的な利用を促すために割引などの特典を提供し、ブランドへの忠誠心を高めるマーケティング戦略です。なかにはルーレットなどのゲーム機能を取り入れて、楽しみながら利用できるクリエイティブなマーケティングアイデアも存在します。
ロイヤリティプログラムには、ポイント型や会員ランク型、有料型、社会貢献型などのさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴とメリットがあります。たとえばKuradashiでは購入を通じて動物保護や災害支援を行える社会貢献型のプログラムを導入し、リピーターを獲得しています。こうしたロイヤリティプログラムは新規顧客の獲得や集客コストの削減、顧客維持率の向上、売り上げ増加に役立ちます。
ロイヤリティプログラムの導入には、既存のソフトウェアやアプリを活用する方法が有効です。たとえばShopifyを活用すれば、アプリをダウンロードするだけでポイント還元プログラムや会員ランク制度などを導入できます。無料体験も実施していますので、ぜひShopifyをご活用ください。
続きを読む
よくある質問
Shopifyのおすすめロイヤリティプログラムアプリは?
大手企業が実施しているロイヤリティプログラムの例は?
-
au(エーユー):
auサービスの利用を通じて、買い物や投資、自動車保険などに使用できるPontaポイントが溜まる仕組みを採用 -
ソフトバンク:
ソフトバンクが提供するサービスの利用で、携帯料金の支払いや非営利団体への寄付などに利用できるソフトバンクポイントが溜まる仕組みを採用 -
agoda(アゴダ):
ホテルや航空券などを予約できるagodaは会員ランク制度を導入しており、ランクに応じた割引を提供 -
Amazon(アマゾン):
有料型(サブスクリプション形式)ロイヤリティプログラムである「Amazonプライム」を通じて、会員限定の動画・音楽コンテンツの利用権や送料無料といったさまざまな特典を提供
ロイヤリティプログラムで失敗しないためのポイントは?
顧客体験の質を高めることがポイントです。単なる割引だけでは価格競争に陥る可能性があるため、簡単に参加できる仕組みを整えたり登録手続きを簡単にしたりする工夫が求められます。また、プログラム導入後は効果の検証を忘れずに行い、どのようにすれば人におすすめしたくなる商品にできるのかを考え、改善し続ける必要があります。
ロイヤリティプログラムとあわせて実施すべきことは?
ターゲットを詳細に決定するペルソナ設定を行ったり、既存顧客に上位モデルの商品や、関連商品の購入を促すアップセル・クロスセル戦略を採用したりすると、さらなる売り上げアップを見込めます。いずれもロイヤリティプログラムと相性がよいので、あわせて実施することを検討してください。
文:Yukihiro Kawata イラスト:Rachel Tunstall