コンテンツマーケティングは、近年多くの企業や個人事業主が行っているマーケティング手法の一つです。ネット広告やCMは閲覧されずに飛ばされやすい傾向があるのに対し、有益な情報を提供するコンテンツマーケティングは信頼を得やすく、認知度向上とコンバージョンにつながりやすいというメリットがあります。
この記事では、コンテンツマーケティングに関する基礎知識をまとめました。コンテンツマーケティングの戦略の立て方やコツ、成功事例も紹介しているので、コンテンツマーケティングを始めたい方はぜひ参考にしてください。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、消費者に役立つ情報(コンテンツ)を使ったマーケティングの手法です。ブログやメルマガ、動画、SNSなどのメディア上で、消費者に有益な情報を発信します。定期的に役立つ情報を発信して、売り手と買い手の信頼関係を築き、企業やブランドについて知ってもらったり、商品・サービスを購入してもらったりすることができます。
作成するコンテンツには、消費者の興味を引く情報や役立つ情報が選ばれます。コンテンツを通して消費者のファン化を促し、提供する商品やサービスに興味を持ってもらうきっかけを作りましょう。「有益情報を提供しているサイト・アカウントである」と認識してもらえれば、消費者からの信頼を得られ、安心して購入してもらうことにもつながります。商品・サービスの良さを直接アピールする広告とは異なり、消費者の警戒心を取り除き、購入ハードルを下げる効果も期待できます。
コンテンツマーケティングの種類11個
コンテンツマーケティングは上記11種類に分けられます。1種類に限定して行うことも可能ですが、複数種類を組み合わせることで、より効果的なマーケティングが実現できます。それぞれの特徴を理解し、自社商品やサービス、ターゲット層に合ったコンテンツマーケティングを行いましょう。
1. ブログコンテンツマーケティング
ブログコンテンツマーケティングは、コンテンツマーケティングの中でもよく行われる手法の一つで、消費者の疑問に答える記事を作成してブログサイトへの訪問を促し、ECサイトや商品紹介ページへの導線を作ります。ターゲット層が検索することが予測されるキーワードを使用したり、SEO対策を行って検索順位を上げたりして、多くの消費者に記事を読んでもらえる工夫をするとより効果的です。
2. BtoBコンテンツマーケティング
BtoBコンテンツマーケティングとは、企業を対象としたコンテンツマーケティングで、企業にとって役立つデータの提供が行われます。BtoBビジネスモデルの場合、商談へとつなげるために連絡先が取得できる仕組みが積極的に用いられます。例えば、連絡先や企業名、担当者名を入力すると最新の市場状況の調査結果や経営ノウハウに関する資料をダウンロードできるといった手法です。これらの資料はホワイトペーパーと呼ばれ、取得した連絡先や企業名・担当者名などは、その後のメールマーケティングや営業に活かすことができます。
3. BtoCコンテンツマーケティング
BtoCコンテンツマーケティングは、消費者を対象としたコンテンツマーケティングのことです。BtoBコンテンツマーケティングとは異なり、通退勤中や就寝前など、ちょっとした時間で閲覧できる短いコンテンツが好まれる傾向にあります。そのため、一般に短めのブログ記事や短い動画、SNS投稿が活用されます。
4. ECサイトコンテンツマーケティング
ECサイトコンテンツマーケティングは、デジタルチャネルを活用してECサイトでの商品購入を促すための手法です。BtoBやBtoCマーケティングにおいては対面イベントが含まれる場合がありますが、ECコンテンツマーケティングはオンライン上で行われるという特徴があります。
ECサイトの商品ページだけでは伝わりにくい商品の使用感やコーディネートのコツなどをブログやSNS、動画を介して紹介できます。例えば調理器具のECサイトを運営している場合、レシピ動画を作成したり、商品の使用感や魅力が伝わる画像をSNSに投稿したりといった方法が考えられます。ECサイトコンテンツマーケティングにおいて、質の低いコンテンツの発信はブランドイメージの悪化にもつながるため、無理に多くのコンテンツを作成するのでなく、質を保ちながら定期的な発信をすることをおすすめします。
5. インフォグラフィックを活用したコンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングにおいて、情報を図や表、チャートを使って見やすく表示したインフォグラフィックは、積極的に取り入れたい手法の一つです。一目で情報がわかりやすく、短い時間で興味を持ってもらいやすいというメリットがあります。また、文章だけのコンテンツと比べて拡散されやすいという特徴もあり、認知度向上にも有効な手段と言えるでしょう。
6. ポッドキャストコンテンツマーケティング
音声で配信するポッドキャストは、多くの個人や企業が取り入れているコンテンツマーケティングの一つです。ポッドキャストは、書くことよりも話すことを好むソートリーダー(特定の業界や分野での先駆者)を紹介するのにも最適です。また、企業のリーダーと業界の著名人ゲストとの対談形式でのコンテンツを作ることもできます。
7. 動画コンテンツマーケティング
動画を使ったコンテンツマーケティングは、文章や画像に比べると多くの情報を短時間で伝えることができ、印象に残りやすいという特徴があります。視覚と聴覚に訴えることのできる動画は、その臨場感ゆえに視聴者の感情を揺さぶるのに長けており、ストーリーテリングにも適しています。さらに、一度作成した動画はウェブサイトやSNSで利用できるため、さまざまなメディアを使って効率よく拡散することもできます。近年人気が高まっているTikTok(ティックトック)やYouTube(ユーチューブ)ショートなどの短い動画の活用も検討してみてください。
8. SNSコンテンツマーケティング
SNSは拡散力が強く、親近感を持ってもらいやすいという特徴があり、コンテンツマーケティングに最適と言えます。Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、TikTokなど、それぞれのSNSの特徴に合わせた運用が必要です。またSNSは視聴者との双方向コミュニケーションもでき、やりとりを通して顧客のニーズに応えることで、顧客維持に役立ちます。
9. インタラクティブコンテンツマーケティング
インタラクティブコンテンツとは、情報発信者と視聴者が相互にやりとりできるコンテンツのことです。情報を受け取るだけの一般的なコンテンツと比べて、インタラクティブコンテンツは潜在顧客の興味を引きつけやすい、シェアによる拡散が期待できるといったメリットがあり、コンテンツマーケティングの手法として近年注目を集めています。例えば、SNSの「いいね」が一定数を超えたら期間限定でお得情報を公開する、ゲームやクイズの回答に合わせて表示される内容を変えるといった方法があります。
10. メルマガを活用したコンテンツマーケティング
メルマガでのコンテンツ配信は、メールマーケティングの一つで、コンテンツマーケティングと相性がよい手法として知られています。役立つ情報の配信だけではなく、ブログやウェブサイトへ誘導するためにURLを添付したり、新着のホワイトペーパーの告知をしたりといったことが可能です。ウェビナーやイベント開催の告知にも活用できます。
11. ブランデッド・コンテンツを活用したマーケティング
ブランディングを重視したコンテンツはブランデッド・コンテンツと呼ばれ、これらを重視したマーケティングは企業やブランドの認知度を高めるのに適しています。代表例としては、味に定評のあるレストランを掲載するミシュランガイドが挙げられます。ポジティブなブランドイメージを形成することで、消費者の購入ハードルを下げることにつながります。
コンテンツマーケティング戦略の立て方とコツ
コンテンツマーケティングの手順は上記の通りです。それぞれの手順の内容を詳しく見ていきましょう。
ペルソナ設計
ペルソナ設計とは、商品やサービスを利用する顧客像を具体化することです。年齢や性別、仕事などにとどまらず、価値観や生活スタイル、趣味、家族構成など、より具体的に顧客像を掘り下げます。設定したペルソナへの情報伝達を意識することで、具体的で訴求力の高いコンテンツが作れます。
カスタマージャーニーマップ作成
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを購入するまでの行動や思考を可視化したもので、顧客目線に立ったコンテンツ作成とコンバージョン率向上のための施策を講じることができます。ペルソナの行動や感情、思考を予測することで商品・サービスの認知から購入に至るまでのプロセスを時系列化し、購買意欲を高めるための対策を練ることができます。
コンテンツリスト作成
作成したペルソナとカスタマージャーニーマップを元に、消費者の求めるコンテンツをリスト化します。コンテンツリストは膨大になる可能性があるので、カテゴリーごとに分けたり、ウェブサイトやSNSなどコンテンツを投稿する場所ごとに分けたりすることをおすすめします。
コンテンツ作成
コンテンツリストを作成したら、優先順位を決めてコンテンツを作成していきます。コンテンツ作成には時間がかかるため、自社で行う場合には作成スケジュールや公開スケジュールをあらかじめ作っておきましょう。人材確保が難しい場合には、制作会社に依頼することも検討してみてください。
コンテンツマーケティングを効果的に行うコツは、KPI設定を行ったり、一定期間が経過したら振り返りを行ったりすることで、改善を続けていくことです。コンテンツ配信のタイミングや内容、配信メディアなどを細かく分析し、次回以降のマーケティングに活かしてください。
コンテンツマーケティングの成功事例
キナリノ
ファッションから生活雑貨、グルメ、美容、旅行など幅広いカテゴリーの記事が掲載されているキナリノは、圧倒的な記事数と情報量が特徴です。記事内には、販売している商品へのリンクボタンがあり、気になる商品をすぐ購入できるよう導線が引かれています。気になるページはお気に入りに入れることができ、あとでじっくり読みたいユーザーのニーズにも応えています。SNSも定期的に更新されており、マルチチャネルマーケティングの事例としても参考になります。
経営ハッカー
経営ハッカーは、クラウド会計ソフトのfreee株式会社が運営している自社ブログで、BtoBコンテンツマーケティングで成功を収めた代表的な事例です。会計士や税理士など、専門知識とノウハウのある専門家に記事を執筆してもらうことでユーザーとの信頼関係構築に成功しています。記事のクオリティも高く、専門的な内容がわかりやすく解説されていることから評価が高いのも特徴です。
北欧、暮らしの道具店
北欧、暮らしの道具店は、北欧食器や家具、雑貨を扱うECサイトです。サイト上には、読み物として楽しめるバイヤーの裏話や、時間がない人も短時間で読み終えることができるミニコラムも充実しています。体格の異なるスタッフによる着用レポートもあり、試着ができないというECサイトユーザーの不安を解消しています。また、YouTubeのアカウントには北欧のライフスタイルをテーマにしたさまざまな動画がアップされており、取扱商品を実際に使用する場面が盛り込まれていることから、自宅での使用シーンを想像しやすいことも顧客の購入ハードルを下げる理由の一つです。SNSへの投稿も充実していて、総合的なコンテンツマーケティングの参考になります。
まとめ
コンテンツマーケティングは従来の広告とは異なり、提供するコンテンツを通して消費者との信頼関係を築き、将来的な商品・サービスの販売へとつなげる手法です。BtoB、BtoC、ブログ、動画などその種類も多岐にわたり、自社のビジネスモデルやターゲットユーザーに合わせて、複数のマーケティング手法を組み合わせて行うことでより効果を発揮します。今回ご紹介した成功事例や、戦略の立て方とコツを参考にしながら、コンテンツマーケティングを実践してより多くの潜在顧客にアピールし、ブランド認知度向上や売上アップを目指しましょう。
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コンテンツマーケティングに関するよくある質問
コンテンツマーケティングとSEOの違いは?
消費者に役立つ情報を使ったマーケティングの手法をコンテンツマーケティングと呼ぶのに対し、SEO(検索エンジン最適化)は検索エンジンで検索をしたときに、ページの上位に表示されるように行う対策のことです。
コンテンツマーケティングとデジタルマーケティングの違いは?
コンテンツマーケティングはオンライン、オフラインのどちらでも行えるのに対し、デジタルマーケティングはオンライン上で行われるマーケティングのことです。
コンテンツマーケティングとWebマーケティングの違いは?
コンテンツマーケティングにはウェブサイトやSNS、動画、ポッドキャストなどさまざまな種類があるのに対し、Webマーケティングはウェブサイトに特化したマーケティングの手法を指します。
文:Masumi Murakami